静寂と、ことばの在処

こころの奥処。 ことばの在処。 ことばの居場所を求めて。

2023/11/01 奏でる音

はじめて触れたグランドピアノは

ひとつひとつの音が、うつくしかった。

なめらかな音が、耳に心地よく残る。

弾いている時間の尊さを、肌で感じた。

存在するだけで異彩を放つグランドピアノは、

とても高貴で触れることさえ、憚られる。

 

重厚感が際立つそのピアノに、緊張感が高まる。

音を奏でる。

 

強さや弱さが、自分に委ねられる。
長さや短ささえ、自分の手にかかっている。

憧れていた。

 

見るだけだったその存在に今、触れられる
というリアルがこころを弾ませた。

 

そのときだけ。

その時間だけ。

触れられるのは、このときだけ。

本当にうつくしい音は、きえない。

本当にうつくしい響きは、鳴り響く。

いつまでも。