静寂と、ことばの在処

こころの奥処。 ことばの在処。 ことばの居場所を求めて。

2021/11/02 亡霊

視界が狭くなっていた。

 

目を開けることさえしんどくて、

話をすることさえしんどくて、

存在することさえ、しんどくて。

 

まるで抜け殻だった。

痛みに包まれ、その鎖を断ち切ることができずに、

どこかわからない世界にいるような感覚。

 

 

開放されては、また一難、また一難と、

ぼくを苦しめた。

そんな苦境下の自分は、自分ではないみたいだった。

 

 

大切な人の笑顔さえ

空想の中に消えていき、

すぐに痛みに引き連れられていく。

半ば、亡霊のようなものだ。

 

 

その夜、

嗚咽に混じるような大粒の涙をひたすら流し続けた。
心を震えさせることを、止めることができなかった。

 

 

この涙は、思いの丈。

 

苦しさ故の涙。

悔しさ故の涙。

自分のため、東奔西走してくれる家族への涙。

 

 

 

ことばにならない声は、全てを包括して、涙となり、溢れ出す。

 

 

 

流れた涙は、

少しだけ自分のこころを包んでくれた。